ヴィルヘルム・ハーツとは

デンマークのシェラン島の北部、フンデステッドという小さな田舎町の工房で、木工と金工の職人の2人がカスタムメイドでつくる杖を生み出したことが始まりです。

Kristoffer Vilhelm Pedersen

建具屋を営み、長年に渡り「木」を扱ってきた自然と共に生きる職人、Kristoffer Vilhelm Pedersen(クリストファー・ヴィルヘルム・ピダーセン)。 

Thomas Hertz

金属のスペシャリストで0.001ミリまでこだわる完璧主義な職人、Thomas Hertz(トーマス・ハーツ)。

ブランド設立のきっかけとなったのは、ひとりの相談者

2014年の秋、Lea(リア)というひとりの女性が建具職人のKristoffer(クリストファー)に相談の連絡をしたのがすべての始まりでした。

言語療法士であるLeaは、慢性的な股関節障がいがあり、常にロフストランドクラッチという杖を使用していました。彼女は病院が提供するアルミニウムの杖をどうしても好きになれず、18歳のときに「Runestokken(ゴーネストックン)」という小さな会社からスタイリッシュなロフストランドクラッチを購入しました。しかし、交換する必要が出てきた20年後、会社はすでになくなっており、Leaはふたたび新しい杖を探さなければならなくなってしまいます。

Leaは知り合いに会うたびに松葉杖を修理する人や職人を知っているかどうか尋ね、とある家族から何でも修理をすることのできる熟練の建具職人、Kristofferの連絡先を入手します。

LeaはすぐにKristofferに電話をかけて事情を話し、助けを求めました。そのとき彼は仕事中で、お客さんの家に新しい窓を取り付けていましたが、快くこう返事をします。

「もちろん。30分で家に帰れるから、そこで話そう」

このとき、LeaはすでにKistofferの家の前に車を停めていました。




KristofferとLeaはコーヒーを飲みながら松葉杖について対話をし、2人で理想の杖のデザインを描きはじめ、大いに盛り上がります。そしてKristofferは賢明に結論を出しました。



「あなたの杖を直すことはできない。ただ、新しいものをつくることはできる。問題はなにもないよ、ただの棒とハンドル、アームレスト(肘掛)をつくればいいのだから…。」

しかし、最初のプロトタイプ(試作品)ができあがったのはその8ヶ月後のこと。


 

人体にダイレクトに影響を与える“杖”

ロフストランドクラッチというものの作りは見た目よりとても複雑であり、そのうえ人体にもろに影響を与えます。

フィットしない杖を使用すると身体を補助するどころか、逆に悪影響をもたらしてしまいます。Kristofferは作業をしながらそれを痛いほど実感し、自身が発言した“ただの杖”を 乗り越えなければならなくなりました。

そして、親友である金属技術者のThomas(トーマス)に協力を要請したのです。 金属のスペシャリストであるThomasは、Kristofferが描いた杖のラフを見ながら図面を作成し、モデルを試しながら2人で問題をひとつひとつ解決していきました。

さらに自宅の庭先にアトリエを建て、そこに大掛かりなマシーン(CNCルーターとCNC旋盤)を設置し、作業環境を整えたのです。

 

 

対話から生み出された杖

ようやく最初の杖を市場に出す準備ができたのは、LeaがKristofferの家で最初のコーヒーを飲んだ2年後のこと。さらに、Leaのために作られたの図面から4つの異なるモデルを生み出します。テストの過程でLeaと職人たちは多くのコーヒータイムを共にし、今ではすっかり親しい友人となりました。



そして2017年、KristofferとThomasは互いの名前の一部(Kristoffer “Vilhelm” Pedersen,Thomas “Hertz”)を取って、「Vilhelm Hertz(ヴィルヘルム ハーツ)」というブランドを立ち上げたのです。 そして現在、Vilhelm Hertzの杖は美しい福祉用具として、デンマークのみならず世界中に広がりつつあります。


日本でのスタート

2018年に代表の宮田尚幸がデンマークの工房に半年間住込みで働き、職人との信頼関係を築くうえで言われた「日本でこの杖を広めることは、お前に任せた。」という言葉から、2019年に日本で代理店を始めることになりました。

2021年8月に、より社会的な動きを取り入れていくために、風と地と木 合同会社を設立し、Vilhelm Hertz Japan(ヴィルヘルム・ハーツ・ジャパン)の運営母体としています。

2023年4月からは、より丁寧に製作やアフターフォローを行うため、エネルギー問題を改善するため、製造を日本でも開始。日本の高い技術を持った職人と協働し、Denmark Design × Japan Made を実現しはじめました。